遙の日記・独り言

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2003年 12月その1


NYからジャズピアニストの友達が来る。
ライブはやはり素晴らしい。
さっそくライブで演奏された曲のタイトルを聞き、楽譜を買った。
よし、弾くぞ。ジャズ。


2003年 12月その2


たった2日。
たった2日大阪を仕事で離れただけで、覚えたはずのピアノは全部忘れた。
こうやって途中で挫折した楽譜だけが山のように積みあがる。
ときめきを買って、挫折ばかりが積みあがる。
深夜、右手だけでピアニシモで弾く。


2003年 12月その3


初めて家族で回転寿司に行く。
回転寿司の店員と喧嘩する。
なんでこうなるんだろう。
どうしていつも、こうなんだろう。


2003年 12月その4


番組忘年会ビンゴゲーム。
最後まで上がらない私を見かねて横の男性が
「ワシ追加商品をだしたるから、それ当て」
と言って5万円出してくれた。
そしたら
それを他の人が当てた。
向かいに座る男性が
「今度は俺が出したるから当て」
と言って5万円出してくれた。
それも他の人がとった。
「男も商品も、私には当たらない」と言ってみた。
誰も笑わなかった。


2003年 12月その5


同業者の友人の誕生日パーティを主催する。
ぶっちぎりのいけてる女性たちで、ファンも多い。
でも、全員誕生日はいつも一人なんだ。
だから私たちで互いに祝い合う。
営業笑顔をせずに済むよう、同業者だけで祝ってやる。
皆ホッとして、ブスッとして、無口で笑わないんだ。
喋らないというプレゼントもある。


2003年 12月その6


昼も夜も食事会。
パーティの後も食事会。
ああ食事会。
はっはっはっ。
痩せれるケッ。


2003年 12月その7


一年、バレエが続いた。
すごく好きだ。
バレエ。


2003年 11月その1


銀座のソバ懐石の店に入った。
ビンゴだった。
高くなく雰囲気よく従業員よく味よし。
ビンゴ!ビンゴ!と何度も叫びながら銀座を歩く。
メシが美味いと、ただそれだけでこれほどエキサイトできる。


2003年 11月その2


京都に行く。
その風情のある路地を歩いているとふと鳥のスープが飲みたくなった。
上手い具合に鳥鍋料理屋があったので入った。
奥の座敷に通された。
予想通り美味いスープに舌鼓をうった。
女将が言った。
「10年前に、一度、お越しになりました」
私は耳を疑った。
何一つ覚えていない。
「誰と?」と聞くと、
女将は言いにくそうに、私の連れを気遣うように「男性と」と答えた。
人間の記憶はすごい。
私は何一つ覚えてなくても、他人が私の過去のロマンス
を覚えている。
私は舌だけだ。
鳥のスープ!それだけだ!
すっげー。


2003年 11月その3


エンターティナーと舞台終演後に食事することになった。
待ち合わせの料理屋で座っていると、静かに微笑み入ってきた。
疲れたように座り、深く息をし、低く喋った。
でも舞台では明るく元気にサービスする。
そしたら、皆が元気になってくれるから。
元気をあげるほうも、もらうほうも、
夢を与えるほうも、もらうほうも、一緒だ。
孤独でしんどい。
ただ、どっち側にまわるかだけだ。


2003年 11月その4


数年ぶりに部屋をかたずける。
あ、掃除はしてるから。
いらないもの全部捨てようと思った。
「いつか」と思ってとっておいたもの。
「いつか」なんてない。
まったく、数年だけでも人生を読み間違える。


2003年 10月その1


ラジオのレギュラーが始まった。私の好きな人に出てもらい、私が好きなだけ喋る1時間半。うれし。がんば。



2003年 10月その2


東大時代のゼミ仲間と会う。昔「いつまでこんな日々が続くんだろ」と鬱々と目にクマを作ってどんより過していた親友たちは、全員、博士号をとった。そして就職し、各地に飛び立った。
「あの時のあなたたちに教えてあげたいね。将来、あなたたち全員博士号だよって」
「そして遙さん、将来、あなたは私たちをネタにした本でベストセラーになるよって」そう言いあって笑った。
それを教えてあげたいほど、暗く何もいい事なんて起きそうにない日々だった。だから、今も暗くてもがんば。


2003年 10月その3


タイガース優勝番組の準備をした。
準備だけで終った。
デートをすっぽかされた感じ。
すっごくお洒落してドキドキしながら待ってたのに。。。
ダイエーの万歳や胴上げを見ていると、
失恋直後に出席する結婚式みたいだ。
どれほどがんばっても幸せは必ず他人にいくのを見せつけられる。
そんな気分。


2003年 10月その4


食事をご馳走になる。
お手ごろ価格で食べ放題のレストランだった。
ピラフやミートスパゲティ満載。
ガキがうるさくて家族連ればかりで落ち着かなかった。
安かったらあかんと思った。


2003年 10月その5


食事をご馳走になる。
松茸と霜降り肉の豪華ホームパーティだった。
見渡すと私が一番若かった。
皆の皿を気遣い、キッチンにも入った。
食べる暇がなかった。
高かったらエエっちゅうもんでもないと思った。



2003年 9月その1


大切な人と大切な話で会った。
いつもは携帯そんなに鳴らないのに、大切なときに限ってたくさん鳴る。
あとで数えたら20本も鳴っていた。オフにすりゃいいもんだろうけど、そんなときに限ってオフにできない事情もある。なんで?いつもは日に一本も鳴らないときもあるのに!三日で一本も鳴らないときもあるのに!



2003年 9月その2


編集者との会談。選びに選んだ店は、隣が男性8人の宴会テーブルだった。鍋の向こうの相手に何度も話を聞き返さなきゃいけなかった。声が途中でかすれた。「店を変えましょう」と、行った店は子供が奇声をあげて走り回っていた。なんで?夜中の六本木のカフェだよ!
上機嫌のオヤジと、元気すぎるガキは嫌いだ。
帰り道、舞台を終えた友人と麻布のカフェで朝5時まで過した。私が「ふー」とため息ついてコーヒー飲むと、友人も「ふー」とコーヒー飲んだ。友人もその日いろいろあったのだろう。苦戦して格闘した後、同じ思いでコーヒーを飲める相手がいるって素敵だ。



2003年 9月その3


何度も鳴る友人の電話に「必ず行く。遅くなる」とだけ言って切った。お誕生日会のお誘いだった。私が行けたのは夜中の2時半だった。行ったら友人はいなかった。待ちくたびれて帰ったそうだ。「私は来たよ」とメールを入れた。
私は行くと言ったら、行くんだよ。なんで帰るんだよ。なんで待っててくれなかったんだよ。寂しいじゃん。寂しいから思いっきり宴会で一人で騒いだ。
朝まで暴れた。



2003年 9月その4


兄の友人が実家に来た。「おっちゃん」と声をかけた。「なんや洋子ちゃん」と言われた。
満面の笑みで私を見つめる。鬼瓦みたいな顔がその時だけはクチャクチャになる。
「おっちゃんの手は大きいね」と言うと「それはな、おっちゃんが男やからや」とまた満面の笑みで私を見つめた。「私の手はちいさいの」と見せると、「それはな、洋子ちゃんは女の子やからや」と答えた。おっちゃんが私を見るときはいつもグチャグチャに微笑む。
おっちゃんが帰ったあと、兄嫁が私に「あんたが家で幼児返りするのは、よほど外で無理してるのか?」と聞いた。女の子に戻るのは気持ちいい。でも女の子じゃ生きていけない。両方ほしいんだ。必要なんだ。



2003年 8月 その1


芦屋のイタリア料理店に知人に連れて行ってもらった。
メニューは、店長が、暗記したものをすべてみごとに喋った。
講談を聞いているみたいだった。
店長は私を見つめて、まばたきもせず、「モナリザ」を歌い上げてくれた。
気恥ずかしかった。歌い終わるまで私も彼をまばたきせず見つめた。
戦いだと思った。
心だけがローマにぶっ飛んだ。



2003年 8月 その2


ロンドンへ、ビジネスクラスに乗ってみた。
隣はおそらくベンチャー系の社長。
そしてモデルあがりの妻。そして子供達。
妻は「パパ」と言って、夫にすべてをやってもらっていた。
うどんですかい、
の、七味まで「パパ」と開けてもらっていた。
なんでも自分でする私と、なんでも男にやってもらう隣の女と、
どっちが得なんだろう。
どっちが幸せなんだろう。

わかんね。
はっきりしてるのは私は彼女ほど美人じゃない。



2003年 8月 その3


ロンドンのハズリッツホテルに泊まる。
300年前に建った小さなホテルでロマンチックだった。
朝、メイドさんが焼きたてのクロワッサンをベッドまで持ってきてくれた。
あちっあちっと言いながら、
ふかし芋を食べるみたいにクロワッサン食べた。
あんな美味いパンは初めてだった。
まだまだ世の中には私の知らない美味いもんがある。



2003年 8月 その4 ロンドンPart2


ソーホーは、ゲイタウンだと聞いてはいたが、その数の多さに驚いた。
ゲイをかき分けて道を歩いた。
美しい男たちが、子育てしている姿に何度も出会った。
ゲイタウンは、女性が一人でも安心して歩けることに気づいた。



2003年 8月 その5 ロンドンPart3


オリエントエキスプレスに乗った。
まんまアガサクリスティの世界の中で、
行きの3時間を食べ続け、
帰りも3時間アフタヌーンティのサービスがあった。

っていうか、食べきられへんっちゅーねん。



2003年 8月 その6 ロンドンPart4


有名な店で、ローストビーフを注文してみた。
鍋ほどのサイズのパンが出てきた。
巨大な肉がテーブルに乗った。日本にいる皆に見せたかった。
テーブルが巨大に盛り上がると、わけもなくエキサイトする。
翌日、インド料理屋に行った。メニューを延々と喋りつづける店員に、
「そやから、何が言いたいねん」と大阪弁で止めた。
「ただカレーが食べたいだけや」と英語で言った。
私はヨーロッパが大好きだ。音楽も服も建物も、クラッシックが好きだ。
ロンドンのロイヤルバレエの楽屋前で写真を撮った。
タイトルは「ここに通っていたかもしれない私」。。。



2003年 7月 その1


豪邸を持つ友達のホームパーティに誘ってもらった。
子供が走り回って、テレビは野球がついていて、ギターひく人や、喋る人。
家族がいると楽しみ方も雑多だ。



2003年 7月 その2


OLさん達のホームパーティに誘ってもらった。
皆で1メートルくらいの大きさのテーブルを囲んで
同じもの食べて同じ話した。
皆とヒザをひっつけて、顔ひっつけて喋るって楽しい。



2003年 7月 その3


兄嫁と梅田で待ち合わせした。
スターバックスでって言ったのに、30分待っても来ない。
彼女は携帯を持ってない。私の携帯ナンバー知ってるのに連絡もない。
いろんなスタバ探したら、違うスタバにいた。
兄嫁は慣れない手つきで公衆電話をかけようとしていた。
遅いっちゅーねん。
もう!家にばかりいるからそうなるんだ。もう!もう!



2003年 7月 その4


別の兄嫁にフランス料理を誘ってみた。
「フランス料理・・・・」
「いく。いく。いく」
兄嫁を誘ったのに、なんで兄もついてくるんだ?
なんでいつもセットなんだ?
兄嫁は底なし沼かというほど、コース料理をたいらげた。
「夢みたい。夢みたい」と何度も言った。
よかった。



2003年 7月 その5


作家たちのホームパーティに誘ってもらった。
いつもの私の職場のバカ話と、あまりにかけ離れていて衝撃だった。
彼らはテレビを持っていない。
私の世界のすべてが、まったく価値をもたない人たちもいる。
すごい。すごい。



2003年 7月 その6


桂由美のブライダルファッションショーを見た。
花嫁衣裳って素敵だ。なんでアレ、結婚しなきゃ着ちゃダメなの?
あのドレス着て、どっか行きたい。
どうしても結婚したくないけど、どうしてもアレ着たい。
アレ、普段着にしちゃダメなの?
神聖なものにするんじゃなくて、盆踊りに浴衣着るように、
毎年、白いドレス着て遊ぶ日があってもいーじゃん。
なんでアレ、結婚する人だけがひとり占めするんだよ。

ケチ。



2003年 6月 その1


おかしい。
最近は、素顔でもバレることが多くなった。
素顔が美しくなったのか、化粧の効果がなくなったのか、どっちだろう。
サウナに入りたかったので銭湯に行った。
顔を直角に曲げて、ずっと、うつむいたまま着替えた。
ずっと行きたかった近所の銭湯。
10年目に叶った。うれしかった。
サウナ代100円払った帰り道、うつむいて歩いていたら100円拾った。
ラッキー。



2003年 6月 その2


女優時代の友人と、店を4件ハシゴした。
地方公演で数ヶ月も一緒に生活した記憶は消えない。
昔の友人と会うと、すっと力が抜ける。
肩に力入れて生きてるつもりはないのに。



2003年 6月 その3


ベランダのガラスってなんで拭いても拭いても、ぞうきんの跡がつくんだ?
洗面器ってなんで洗っても洗っても、薄汚れてるんだ?
風呂場ってなんで磨いても磨いても、ちょっと黒いんだ?
洗剤の表に書いてあるの、アレ、全部ウソか?
気がつくともう朝じゃないか。
このまま仕事行くのか?



2003年 6月 その4


京都南座に観劇に行った。
絶対食べたい鍵善のくずきりを観劇前に食べに行った。
鍵善まで歩いて5分。
注文して出てくるまで5分。
食べるのに5分。
南座まで5分。の予定でこなした。
「味わって食べや」と言ったのに、友達は焦って5口くらいで
くずきりを食べた。
「あほやなあ」と言いながら、私は10口くらいで食べた。
友達はいつまでもいつまでも、氷だけが残った器を
箸でつつきながらくずきりを探していた。
可哀想だから一本あげた。
「美味い」「美味いっ」と叫びながら歩いた。



2003年 6月 その5


母と罵りあった。
玄関を飛び出すと、
「何言うてもあかん」
と近所のおばちゃんの声が聞こえた。
見ると、暗闇にパジャマ姿のまま立って私を見ている。
町内会とは、リビングだ。
皆、なんでも知っている。
聞いている。



2003年 5月 その1


気合い入れてフレンチを食べに行った。
温野菜の前菜を頼むと、
大皿にゆでたアスパラが一本乗っていた。
友達が「これ家で亭主に出したら暴れるで」と言った。
フレンチレストランに行くということは、
夢を食べにいくということだ。
なんでアスパラ一本なんだ。
それで心はズタズタだ。



2003年 5月 その2


写真撮影ラッシュ。
数枚で終るとラッキー。
数百枚撮ると、顔がコル。
笑う写真は好きじゃない。
でも真顔でいるととても疲れて哀しげで怒った顔に写る。
だから笑う。

笑うしかない。



2003年 5月 その3


フレンチに招待された。
シェフが「旬なのでアスパラを用意しました」と言った。
私は笑顔で押し黙った。
大皿にはゆでたアスパラが乗っていた。

ただし2本。

そしてクレープで巻いてあった。
そのうえにソースが二種類かかっていた。

そう。
これが、フレンチ、だ。



2003年 5月 その4


クラッシックコンサート会場にお洒落して行った。

・・・スカートのおしりのところがパックリ破れていた。
こんな哀しいことって、
誰にでも起こるんだろうか。



2003年 5月 その5


年の離れた兄の友人で鬼瓦みたく恐い男性と、
ひょんなことから、二人きりになった。
西日が差し込む静かなリビングのソファーで私たちは向き合っていた。
沈黙がきりきりしたから、喋ることにした。
「おっちゃん」
「なんや」と笑顔だった。
「おっちゃんは、犬と鳥とどっちが好き?」と聞いてみた。
「おっちゃんは、犬が好きやなあ」と彼は答えた。

窓から風が吹いた。

「おっちゃんは、犬とブタとどっちが好き?」と聞いてみた。
「犬とブタやったら、ブタが好きやなあ」と彼は答えた。
「ふーん」と返事して窓をながめた。
兄が戻り、「おっちゃん言うたらあかん。苗字を呼べ」と私を叱った。
「ブタにおいで言うたら、来る?」とおっちゃんに聞いてみた。
「ああ、来るで」
そう言っておっちゃんはお茶を一口飲んだ。

「ブタ、お座り言うたら、する?」と聞いた。
「お座りはせんなあ」と言って、おっちゃんは笑って私を見つめた。
「おっちゃん、そのブタ食べられる?」と聞いた。
兄がまた
「おっちゃん言うたらあかん」と私をたしなめた。

西日がまぶしかった。



2003年 5月 その6


兄嫁が「家でご飯食べる?」と聞くので、
「時間がない」と言うと、
「じゃ近所の喫茶店でオムライス食べて仕事行きなさい」と言った。
「おいしいの?」と聞くと、
「とても」と言うので「じゃそうする」と言って玄関に出た。
「必ずオムライスを注文するのよ」と兄嫁が私の背中に声をかけた。
「わかった。オムライスね」と言って外に出ると雨だった。
傘を取りに戻ると、兄嫁がまた「オムライスを食べるのよ」と言った。
「うん。絶対食べる。オムライス」と返事をし、
傘をさして喫茶店に走った。
喫茶店は、シャッターが下りていて休みだった。

淋しかった。



2003年 4月 その1


よし、今日はワカメときゅうりの酢の物を作る、
と決めてスーパーに行った。
リンゴ酢っておいしそうだったけど500円もした。
米酢は200円だった。
穀物酢は100円だった。
買い物はおもろい。
料理が完成し、食べた。口から吐き出した。
コントかと思うほどまずかった。

捨てた。

もう穀物酢は買わない。
次は、リンゴ酢を買うと心に誓った。



2003年 4月 その2


きんぴらゴボウを作る、と心に決めた。
鮫肌かと思うほど、表面が乾ききったきんぴらゴボウができた。
色も茶色じゃなくてオフホワイトになった。
口に入れたらパサパサした。
「違う」とつぶやいた。

友達に聞くと、買ったゴボウが悪いと言われた。
兄嫁に聞くと、そういうゴボウを買ったのね、と言われた。
ほんとだろうか?
料理したら絶対まずくなるゴボウってあるのだろうか。



2003年 4月 その3


料理を作るのをやめた。
百貨店の地下食料品売り場に行った。
塩鮭ってこんなに立派だったんだと思った。
厚揚げってこんなに分厚いんだと思った。
全部、ちょっとづつ立派な食品が並んでいた。
見事だと思ったら、ウキウキしてニコニコした。
自分でも意味不明の感情がある。

別に自分が買うわけでもないのに、
塩鮭が立派なだけで、人は幸せになる。



2003年 4月 その4


兄嫁が山で山菜を摘んできて料理してくれた。
「これ、犬のウンコとかついてない?」と聞くと、
兄に怒られた。

そういうときだけ夫婦だなと思った。



2003年 4月 その5


兄嫁がアボガド料理に挑戦するのを眺めた。
アボガドを真っ二つに包丁で切ろうとして巨大な種で刃が止まった。
なんとか包丁の刃にくい込んだ種をはずそうとしたがはずれなかった。
突然兄嫁は「トォーッ!」と声をあげ包丁を振り下ろし、
巨大な種を叩き切った。
はずみで床に落ちたアボガドを犬が瞬時にくわえて逃げていった。
ここは戦場だと思った。



2003年 4月 その6


200回見合いして、
この1ヶ月で5キロ太ったと女性タレントが撮影の合間に私にこぼした。

哀しくて哀しくて哀しかった。

手に入る喜びはあっても、手に入らない不幸などないと、
届ける言葉も時間もないことが哀しくて、うつむいた。



2003年 3月 その1


風邪ひいたみたい。
のどが痛く、熱っぽい。
でも今日は私を中心とした宴会がある。
絶対行くんだ。

行かなきゃ。



2003年 3月 その2


熱がひどい。身体もひどい。
昨日、ライブハウスで絶叫して歌ったせいか、
のどが息するだけで痛い。
やっぱ3軒ハシゴはこたえた。
でも楽しかったな。
嬉しかったな。

でも苦しい。



2003年 3月 その3


一睡もできないまま仕事に行く。
精一杯喋ったけど、
いつもより口数が少ないみたい。
共演者からCMの間に
「入られへんネタか?」と気遣われる。
「いや」と言い、もっとがんばった。
次のCMで共演者から
「心の調子が悪いのか?」と聞かれる。
「いや」と言い、もっともっとがんばった。
次のCMで共演者が
「身体の調子が悪いのか?」と聞かれる。
小さくうなずいた。
本番後、病院に行った。
医師が「はい。入院」と言った。
「サイテー」とマネージャーが言う。
でも、あの宴会だけは
どうしても行きたかった。
神様が時を戻してくれても、
やっぱり宴会は行ったと思う。

サイテー。



2003年 3月 その4


バレエに行く体力が戻らない。
筋肉が落ちて焦る。
マネージャーに
「バレエのスケジュールを入れたい」と言うと
「やめて!」と叫ばれる。
何度言っても、叫ばれる。



2003年 3月 その5


バレエに無理して行った。
よみがえった。
もう元気だ。
力がみなぎるのが分かる。



2003年 3月 その6


トゥシューズを履くことになった。
すごい!いいのか?
まだピルエットできないままなのに。



2003年 2月 その1


本のパブリシティに忙しい。
各ラジオ番組をまわらせてもらうと、
それぞれのパーソナリティの違いを
痛切に感じる。
あらためて浜村じゅんさんの凄さを感じた。
彼は凄い。
本当に凄い。



2003年 2月 その2


東京に行くたび、「食事しよう」と
5人の人に誘われる。
会食の時間を取るよう努力しなきゃと、
急いでとりあえず新幹線に飛び乗った。
乗ってから5人に電話した。
5人ともつかまらなかった。
私ひとりでイタリアンレストランで
夕食を取った。

一体、なんなんだ。



2003年 2月 その3


一週間かけて一キロ体重を減らした。
着実に計算して減らした。
一度、イタリアンをひとりで腹いっぱい食べたら、
たった一日で一キロ戻った。

全部、イタリアンが、あいつが悪い。



2003年 2月 その4


部屋のダイニングテーブルセットを処分した。
私はひとりなんだから。
椅子は一個でいい。
一人がけの豪華な椅子を買った。
私にはきっとこれが似合う。



2003年 2月 その5


最近私は帽子をまぶかにかぶる。
行きのタクシーの運転手さんに
「宝塚の人でっか」と聞かれた。
「いいえ」と答えると
「女優さんでっしゃろ」と言われた。
「いいえ」と言うと、
「政治家の辻元なんとかいう人でっか?」
と聞かれた。
「いいえ」と答えた。

不思議なラインアップだ。
帰りのタクシーの運転手さんが
「宝塚のスターさんでっか」と聞いた。
「いいえ」と答えた。
帽子のせいなのか?
私がそうなのか?



2003年 1月 その1


新年だ。
正月って優しい。
一年に一度、毎年、死ぬまで、
人生にやり直しのきっかけを
万人に与えてくれる。
誓いのきっかけも与えてくれる。
私は、バレエはやめんぞ。


2003年 1月 その2


着物で新年のご挨拶に行った。
着物は薄い生地だったが裏地もついていたので
冬物だと思って着た。
家に帰ると
「薄いのは化繊の着物だからだ」と
兄嫁から教わった。
正絹の着物もあるでしょと叱られたけど、
見分けがつかなかった。
「手で触ってわかるやろ」と兄に言われた。
わかった。
化繊は軽い。正絹は重い。
安い着物は軽くって、高い着物は重い。



2003年 1月 その3


友人とバーゲンに行った。
皮のパンツを友人が試着した。
持つとズシリと重く硬かった。
私が持ってる皮パンは軽くて
柔らかいが高かった。
高いほうがいいよと友人に勧めた。
喫茶店で喋った。
「いい?皮は重いのが安いの。軽いのが高いの。」
「ふーん」
「着物は、重いのが高いの。軽いのが安いの。」
「難しいなあ」

二人で
「皮は・・・着物は・・・」と
つぶやきながら帰った。



2003年 1月 その4


「あんたが化繊の着物きて挨拶に出たのを、
今日の結婚式の話題で皆に喋ったわ」と
兄嫁が私に言った。
豪華な正絹の着物と帯で
着飾った兄嫁がお茶を飲んでいた。
「ほら、高い着物は柄が織り込んであるやろ。
あんたが着たのは、柄が印刷やったやろ」
と自分の袖を広げて教えてくれた。
「お義母さんの着物も見せたろか」
と母のタンスから着物を一枚取り出した。
「ほら、見事な織物の着物でも、
こんなにシミだらけやろ」と言った。
兄嫁は、結婚式で化繊の私を自慢し、
私に自分の着物を自慢し、
母の着物のシ ミを自慢した。
どれもすごいと、感心した。



2003年 1月 その5


「女ども」と兄が言ったので、
怒った。



2003年 1月 その6


「くれぐれも値段は秘密で」
と店に頼んで買ったプレゼント。
即値段をプレゼントを渡す相手に教えた店員に、
怒った。



2003年 1月 その7


予約制のフィットネス。
予約がダブったうえに
「出直してきはったら?」の
窓口対応に、
怒った。



2003年 1月 その8


怒ってばかりで、
泣いた。