6月13日 銭湯

サウナに入りたい。
ニュージャパンみたいな巨大施設じゃなく、スーパー銭湯みたいな家族向けでもなく。
結果、銭湯のサウナにした。
「絶対、バレない。目立たない」と誓って番台のおばちゃんにお金払う。
ずっとうつむいたまま、静かに洗面器をとる。
体流して、サウナに入る。
木製のドアを開けたら、思いのほか軽く、バンッと開いた。
「あー!びっくりした!」とサウナの中にいたおばさん。
「すみません」
こっからが、大阪のおばちゃん現象が始まる。
「びっくりしたわ。窓ガラス割れるか思たわ」
くどい。
反論してはいけない。
「私も割れるかと思いました」
割れるけっ。
バレたくないから喋りたくない。
タオルで顔をほっかむりして、顔を隠して喋る。
「初めてか?」
前にも来た。
「初めてです」
「体洗ったんか?」
まだ洗ってない。
「はい。洗いました」
「髪は洗ったんか」
「まだです」
「髪も洗ってからサウナ入らなあかん」
ほっとけ。
「そーですか」
「髪洗ったら、皮脂がとれて汗が出る。洗って入らな意味ない」
自由やんけ。
「わかりました。次回からそうします」
顔をのぞこうとするおばちゃん。
ずっとうつむいたまま、反省っぽく返事する。
やっとおばちゃんがサウナから出た。
サウナの薄っぺらい扉から外の会話が聞こえる。
「あの子、バンッて、扉開けてんでぇ。ガラス割れるか、思たわ」
見ると、洗い場の全員が私を見ている。
おばはんが私を指さしている。
なんでだ。
なんで、どうしたって、目立つんだ。
これで、私の仕事がばれたら、全員が家族に言うだろう。
家族がまた職場でいうだろう。
「遥が、バンッて扉開けたらしいわ…」
…神よ。
銭湯を出ることにした。
さっきのおばはんが、脱衣場でじっと私の顔を見ようとしている。
声で気づき、どうしても顔を見たくなったのがわかる。
髪を乾かさず、濡れたまま前にたらし、ワカメみたいな状態でうつむいたまま銭湯を出た。
ただ、サウナに入りたかった。

遙洋子

遙洋子

現在の仕事

 

 

アーカイブ

最近のコメント

top