6月11日 追突

タクシーが止まっている。
運転手が窓やらドアやら拭いている。
客らしき男性が外でタバコをくゆらせている。
見るなりわかった。
「ホステスの同伴出勤の男が、タクシーで迎えに来て待っている。長時間待っている。その間、運転手は車を拭いている…」
運転手に言った。
「そこ、私の車を止めるスペースだから、ちょっとタクシーを動かして」
タクシーはちょっと前に動き、そこに私の車を止める。
直後、女が来て、男女がタクシーに乗り込む、その後、いったいどういうワケか、タクシーが私の車に向かってバックする。
あわてて、クラクションを鳴らす。
…タクシーが私に車にぶつかる…。
「えらいすんまへん」と運転手が降りてくる。
なんでバックするんだ。なんでここに車止めると言ったのに、なんで前進しないんだ。なんで後ろ見ないんだ。という言葉は全部飲み込み言った。
「もう行って」
ボンネットに乗ってあぐらかいたまま、駐車場で友達を待っていた。
しばらくすると、さっきの運転手がやってきた。
「さっきはえらいすんまへん」
「気になって戻ってきたの?」
「へい」
「じゃあ、許す」
「よろしいんでっか」
「さっきの、ホステスの同伴出勤でしょ?」
「そうですねん」
「キンコーン」
「よお、わかりますな」
「ところで質問、なんで客がいるのに、窓やらドアやら拭いていたの?」
その次の答えは、衝撃的すぎた。
「…うんこ、拭いてましてん」
「…うんこ?」
「へえ。うんこ」
「なんで・・・うんこ? ワックスじゃなく、うんこ?」
「へえ。窓とドアに誰かがうんこつけよりまして、あんまり臭いからちょっとお客さんに降りてもらって、それで、つけられたうんこを拭いてましたんですわ」
ああそれで、不機嫌に男の乗客は外でタバコを吸ってたわけか、と、合点がいく。
しかし・・・
うんこついたタクシーで迎えに来て、前進じゃなく、バックして他の車にぶつかる男。
そんな男に、私がホステスなら迎えに来てほしくない。
っていうか、うんこつけて、他人の車にぶつかってくる人には、とっとと私から離れてほしかった。
「おっちゃん、もうええわ。帰り。それよりおっちゃん。運転手向いてないで。前進とバックと間違えるねんから」
「へえ。気ぃつけます。おおきに」
なにがみじめって、ホステスをうんこつけた車で待つような男の乗ったタクシーにぶつけられる自分がみじめだった。
「なんで、ボンネットであぐらかいてんの!?」と友達が来た。
「みじめすぎて、動かれへんねん」と返事した。

遙洋子

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